嫉妬の世界史
山内昌之『嫉妬の世界史』新潮新書、2004
タイトルどおり、内容は「嫉妬」。それもだいたいは男の嫉妬。男の嫉妬は、女の嫉妬と同じかそれ以上にいやらしく、特に権力や地位が絡んでいるので、容赦ない。
特に学者の嫉妬は、著者自身の商売に関わることなので、内容が濃い。物理学者の茅誠司と中谷宇吉郎(こっちの方は知らなかった)、植物学者の牧野富太郎、みな名を成した人。しかし、いろいろ嫉妬で苦しんだ。学者の嫉妬など、権力に遠いのだから大したことはないはずだが、当人にとってはそんなことはなく、何々になれなかった、誰それが邪魔をした、ということでずっと恨みがたまるもの。
日本社会では、頭ひとつ抜きん出ると必ず嫉妬を買うもの。これは昔も今も同じ。嫉妬を買わずにすんだのは、ひたすら誠実、忠実をつくして自分をおさえていた人だけ。