オキナワ論

ロバート・D・エルドリッヂ『オキナワ論 在沖縄海兵隊元幹部の告白』新潮新書、2016


著者は元大阪大学助教授、在沖縄アメリ海兵隊政務外交部次長。米軍基地前での基地反対派の映像を外部に流した事件で更迭された人。

この本は著者と沖縄との関係をざっと振り返るという内容で、著者が神戸大学の大学院から『沖縄問題の起源』を書いて歴史学者として一本立ちする過程、在沖縄海兵隊の職員としての仕事、トモダチ作戦への関わり、沖縄メディア、沖縄の基地反対派との関係.について書かれている。

著者は沖縄メディア、基地反対派との軋轢で職を失った人なので、彼らに対して中立的な立場にあるわけではなく、この本も「恨み節」としての要素が入っている。しかし、その点を考えても、沖縄メディア、基地反対派、学界関係者を含めて、事態をまともに見ようとはしていない人たち。

最初から結論ありきで物を見ているので、一方的な立場からしか言わないし、結論に都合の悪い事実はすべて無視。著者は沖縄の社会的な問題についてはほとんど述べていないが、沖縄が日本のどこよりも村社会で、自分たちと違った見解の存在を許さないことを考えれば非常に納得させられる話。

メディアが複数あっても、違うことは言わないのだから、同じこと。著者は、メディアや基地反対派を取り出して攻撃しているが、県庁や新聞の読者である一般県民も同じだろう。自分たちの間で同じ意見を増幅しあって、その虜になっているというもの。これは簡単にはどうにもならない。