岡山の港

巖津政右衛門『岡山の港』日本文教出版、1975


これは、「岡山文庫」の65番目の本。日本文教出版は、同名の会社が2つあるのでややこしいが、こちらは岡山の出版社で、「岡山文庫」は、岡山県の文化と自然を紹介するシリーズ本。もう300巻以上出ている。

著者は、1893年生まれ、もうお亡くなりだろう。元は新聞記者で、その後『岡山市史』の執筆や、岡山県文化財専門委員として文化財の整理にあたったという人。

港といっても、定期旅客船が出入りしたり、大きな工業港になっているところは調べやすいが、小さな漁港まで含めればいくつあるのかわからない。まして岡山県には、笠岡諸島のような離島があり、港の数は多いのだ。

この本は、かなり労力を使って小さい港まで調べており、50くらいの港が出ている。多くは写真や手書きの図面がついていて、実際に足で回って調べている。この本が出版された時点で、著者は82歳なので、お知り合いの車に同乗して、県内くまなく回ったという。

この本が出た時点ではまだ宇高連絡船があり、岡山港も、いまの高島港は建設中で、福島港まで鉄道があった時代。写真は新しく撮影したもの(これも今となっては貴重)だけでなく、昔の写真が豊富に載っていて、昭和初期の港のようすがわかる。停泊しているのは、多くが機帆船。

大畠、大浜、松島が取り上げられているのは、倉敷市史以外はこれくらいのものだろう。石灯籠も味わい深い。