男おひとりさま道

上野千鶴子『男おひとりさま道』文春文庫、2012


上野千鶴子の、「男の老後一人暮らし」論。『おひとりさまの老後』は読んでいない。

評判通り、非常に実践的な本。介護、福祉施設への入所、人間関係、死まで、ひととおりのことは書いてある。

まだまだ介護を受ける年齢じゃないので気にしていなかったが、そういうわけにはいかないことがよくわかった。理由の第1は、介護付きの福祉施設の費用がとても高いこと。終身利用権つきの有料老人ホームが、入居金数千万円、月額利用料20万円から30万円。これはムリ。

高齢者専用賃貸住宅で入居金数百万円、月額利用料13万円から16万円。しかし、これはケアは別料金。これを支払うだけでもキツい人は多いはず。しかも、著者は、「よい介護はカネでは買えない」と断言する。介護は価格と品質が連動しないサービス。理由はカネを出す側の家族が、「家に戻ってきてほしくない」と思っているから。

これはある程度わかる。老人になってからケアがややこしい人(体重の重い人、文句を言う人)は、面倒を見るのが非常につらいので、まともに相手にしてもらえない。

退院後の移行期や終末期のためのケア付きホテルは、1泊3万7200円とある。期間があらかじめわかっていて、お金があれば使うこともできるが、それがわかるかどうか。

人間関係では、子供はあてにならない、妻と仲良くすること、限定的な関係の友だちを幅広く作ることをすすめている。これも納得。

こんなにお金がかかるのでは、老人が血眼でカネに執着しているのも当然。自分の身がかかっているのだ。

コンビニや配食サービスで、一人暮らしは楽になったが、それは体が丈夫であることが前提。老人が健康に必死になっていることにも納得。

老人になってから準備してももう遅く、すべての準備はそれ以前に始めなければならない。人間関係の構築も含めて全部。当然といえば当然だが、おそろしい。