ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち

野嶋剛『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』講談社、2014


第二次大戦後に、秘密で蒋介石の軍事顧問として台湾にわたった「白団」について書かれたルポルタージュ

蒋介石の紹介から、白団の実質的な束ね役だった岡村寧次、白団の実務上の責任者だった富田直亮と根本博、1964年に実質的に終了するまでの白団の活動内容、台湾史上の位置づけなど、要点を押さえて、非常に読みやすくまとめられている。

旧日本軍人は、敗戦で失職していたが、その中の一部の人々が蒋介石に雇われて、軍人教育をしていたということなのだが、蒋介石は、アメリカに台湾防衛を頼りながら、アメリカを信用しておらず、むしろ旧敵だった日本軍人の力を当てにしていたというのが読みどころ。

蒋介石にとっては、単に日本軍人を安く利用したということではなく、日本軍人の能力を高く評価していたから、彼らを頼っていた。日本軍人の側は、いろいろな事情があったが、基本的には食べるため、そして自分たちの能力を発揮できる場所は敗戦後の日本にはなく、名誉の与えられない蒋介石の軍事顧問であっても、そこに自分たちの人生を預ける決意をもって仕事をしていたということ。

白団の名前は、関係者が部分的に記録を残しているのでわかっているわけだが、台湾では基本的に秘密の存在になっていて、資料の閲覧も自由には行えない。国民党にとってはもちろん、ポスト蒋介石蒋経国の台湾にとっても、白団は黒歴史になっている。

数奇な運命をたどった人たちの歴史として、非常に興味深かった。関係者の多くが物故している現在、資料を集められた著者の努力の賜物。