戦後経済史は嘘ばかり

高橋洋一『戦後経済史は嘘ばかり 日本の未来を読み解く正しい視点』PHP新書、2016


高橋洋一の新刊。内容にはかにり驚いた。これまで、戦後日本経済史について教科書的に理解していたことの多くが、誤解だと片付けられている。

傾斜生産方式に始まって、産業政策の無効性、石油危機とインフレは関係なし、プラザ合意は為替介入をやめさせただけ、バブル景気は金融緩和ではなく税制と会計制度の歪みがもたらしたので金融引き締めは不要だった、など、「そうなの???」と頭が混乱する説が連発されている。

しかし、主張の内容にはかなり説得力があり、基本的に信用せざるを得ない。概して、日本政府の経済政策は失敗か誤解だらけで、間違っていてもいいこと(例えば産業政策)は、影響が少ないから問題にならなかったが、バブル期後の金融政策や増税は間違いの影響が破滅的だった例で、失われた20年はほぼ人災だったという話。

著者が政府、大蔵省の中の人だった時のエピソードが豊富に引用されていて、議論の説得力を増している。特に小泉政権下で、竹中経済財政政策担当相が何をしていたかという部分。政策決定の内側もよくわかる。

財政再建のスローガンに振り回されることの危険性もよくわかった。著者には、新書ではなく、より大部の本で論争を吹っかけてほしいと思うが、この本も十分価値はある。新聞を読んで、経済がわかったような気になっていてはダメだということ。