勝海舟 総集編 前編

勝海舟 総集編」前編


1974年の大河ドラマ勝海舟」の総集編、前編。これは本放送の時の記憶がない。この前作が「国盗り物語」、後作が「元禄太平記」で、両方とも覚えているから、これを見ていないはずがないが・・・。

いま見ると、圧倒的におもしろい。特に勝小吉役の二代尾上松緑と、最初に勝海舟役を演じている渡哲也。ムチャクチャ上手い。渡哲也は、とにかく青臭いのだが、こんなはまり役はいないだろう。ペリー来航で、幕府に海防意見書を出すところから、松方弘樹に代わるのだが、途中交代は知っていても、相当違和感がある。渡哲也は無念だっただろうし、松方弘樹は非常に考えこんだはず。

二代尾上松緑は、無学でべらんめえ調のセリフだけなのだが、全部堂に入っている。さすがだわ。3分の2くらいのところで死ぬのだが、このドラマの前半はこの人のおかげで締まっている。昔の大役者は貫禄が違う。

そして、このドラマを傑作にしているのは、倉本聰の脚本。倉本聰は、NHKのスタッフともめて喧嘩別れしているのだが、後編にあたる部分の一部は、倉本聰作ではないことになっている。大丈夫なのか?しかし、特に勝海舟が世に出る前のエピソードが非常にいい。幕臣として公儀に忠節を尽くす勝小吉と、幕府から精神的に自立する勝海舟の対比が鮮明に描かれている。

高野長英役の戸浦六宏佐久間象山役の米倉斉加年は怪演。これも今ではできる人がいないだろう。女優陣は、母親役が久我美子、芸者出身で妻になる丘みつ子、長崎時代の妾が大原麗子で申し分ない。

咸臨丸の航海は、ちゃんとちゃちでないように見せている。しかし、咸臨丸が往復するところを全部ドラマにするわけにはいかなかったようで、勝海舟がいなかった時期に起こった桜田門外の変のエピソードがいきなり入ってくる。アメリカ漫遊の場面はないのかなあ。後編に期待。