オウム真理教の精神史

大田俊寛オウム真理教の精神史 ロマン主義全体主義原理主義』春秋社、2011


評判のいい本だったので、読んでみた。かなりおもしろい。

著者は宗教学者で、異端のグノーシス派を研究している人。なので、キリスト教やその周辺に散在しているオカルトには該博な知識を持っている。オウム真理教はそれらのいろいろなアイディアを混合した派生物と解釈できるというのがこの本の主張。

ロマン主義(だいたいオカルト)、全体主義ヒトラー)、原理主義(終末論)の説明が8割以上で、これがとても勉強になる。特に神秘主義やオカルトについては、ほとんど自分は知らなかったので、それらがどこから来ているのか、整理してくれて非常に助かった。

オウム真理教は体系的に何かから学んだというよりは、麻原彰晃が自分が触れた雑多なアイディアをヨガの手法と組み合わせてつくったもの。この本は、オウム真理教そのものについては、少ないページしかあてていないのだが、オウム真理教を生み出した部品の出所を教えてくれる。

巻頭で、これまでのオウム真理教について書かれた本、中沢新一宮台真司大澤真幸島薗進島田裕巳の著作を取り上げてやっつけている。とりわけ、中沢新一宮台真司については、手厳しく批判している。ポストモダンとか、ニューアカデミズムと言っていた人たちが、オウム真理教の後押しをしていたわけなので、これは当然。80年代に流行っていた思想のムチャクチャさが思い出されて、苦笑させられる。