「戦後保守」は終わったのか

日本再建イニシアティブ『「戦後保守」は終わったのか 自民党政治の危機』、角川新書、2015


船橋洋一シンクタンク「日本再建イニシアティブ」の本。「今の自民党は右にブレすぎなので、中道保守を復活させろ」という内容。そういうことを言う人は多いのだが、この本には中身なし。

まず船橋洋一自身が、「中道保守」についてあいまいなアイディアしか持っていない。内容を読むと、人によって「中道保守」の内容がバラバラであることがわかる。執筆者ごとに、「自分の好きな自民党イメージ」を勝手に投影して書いているのだ。こんなことではダメでしょう。

特にヒドイのは中野晃一。こいつは本物のバカ。実質的にこの本の編者なのだが、よくやらせるなあ。自分で「中道」の意味がよくわかっていない。大平正芳が理想らしいのだが、だったら田中角栄の評価はどうなるのかとか、疑問が次々と出てくる。

まだましなのは、中北浩爾、内山融、宮城大蔵あたり。しかしこれらの執筆者間でも、何が中道保守なのか、人によって言っていることはバラバラ。杉之原真子の少子化、女性、家族の章を読むと、そもそも中道も何も、自民党はこの問題に大して関心をもってこなかったと書いてあるだけ。

ジェニファー・リンドは、これも気合の入ったバカ。ダートマスの先生だが、アメリカ人のぬるい日本ウォッチャーはこの程度の浅い理解しかしてないのだから仕方ない。

自民党が右ブレしすぎと思っているのだったら、もうちょっとまじめに考えないとダメでしょう。とにかく、「右ブレ」はいつの、どの政権がそれにあたるのかということでだいたいの一致が取れるところから始めないと、いつまでたっても話は先に進まない。

一番ダメなのは、派閥で「中道保守」が決まると思っている(特に中野)ところ。派閥と政策は、そんなに強く相関があるわけじゃないし、同じ派閥でも、意見の違う人はいっぱいいるでしょう。昔の自民党は派閥があったからよかったとか、もはやまんが日本むかしばなしのたぐい。