靖国問題の深層

三土修平靖国問題の深層』、幻冬舎ルネッサンス新書、2015


靖国神社問題についての本を書き続けている著者の本。内容的には、『靖国問題の原点』、『頭を冷やすための靖国論』を相当踏襲しているが、最近出た本なので、それなりに新ネタは織り込んである。

この本ではとりわけ、占領下での占領軍当局と靖国神社側の間での、靖国神社をどのように処理するかをめぐる攻防に紙数をさいている。著者の立場は、この時期に靖国神社無宗教の追悼施設か、国家とは完全に切り離された宗教団体のどちらかになっていれば、今日の靖国神社をめぐる問題は解決していたはずで、それができなかったのは、占領軍側の政策の不徹底と靖国神社側の抵抗に理由があると見ているため。

この部分の占領軍と靖国神社のやりとりについては、著者がポインタを示していて、『靖国 知られざる占領下の攻防』、NHK出版と、『奇をてらわず 陸軍省高級副官美山要蔵の昭和』、講談社を読まなければいけないのだが、とりあえず著者のまとめでガマン。

著者の立場に賛成するわけではないが、一応踏まえるべき論点は押さえた上で議論をまとめてくれているのはありがたい。