韓国現代史

木村幹『韓国現代史─大統領たちの栄光と蹉跌』、中公新書、2012


もう新しいとはいえない本だが、非常におもしろい。李承晩から、李明博までの韓国大統領の人物と履歴を中心に、韓国の歴史を見る本。

この本の長所は、大統領という人に焦点があたっていて、大統領になる前に何をしていたかにも目配りしているので、李承晩時代に、朴正煕や金大中、金泳三が何をしていたのかを描くことを通じて、それぞれの大統領の時代が立体的に浮かび上がるように構成されているところ。

李承晩、尹譜善、朴正煕の時代にかなりのページを割いていて、そこに暗い自分にはとりわけ勉強になった。尹譜善が大統領になる前に何をしていたか、クーデターで地位を追われた後に何をしていたかなどぜんぜんわかっていなかった。この3人に、金大中、金泳三を含めた人たちは、いずれも一筋縄ではいかない人達。

残念なのは、朴正煕暗殺以後、崔圭夏、全斗煥盧泰愚の3人はこの本の直接の対象から外されているので、最低限の記述しかないこと。著者は史料上の制約と言っているが、韓国民主化の転機になる時期だから、これは惜しい。他の本で補強するしかない。

登場人物の描写も、事実を踏まえていてかつ躍動的になっていて、そこがこの本の魅力。著者にはいつか、新書版ではないサイズの韓国現代史を書いてくれることを期待。