会議の政治学 II

森田朗『会議の政治学 II』、慈学社、2014


日本の審議会がどのように運営されているか、という本。著者は行政学者だが、とにかく多くの審議会、有識者会議の委員を務めていて、国交省文科省内閣官房財務省厚労省の10の会議の委員になっている。とりわけ重要なのが、厚労省の「中央社会保険医療協議会」の会長(この本での分析対象からは外していると断り書きがある)。

これらの審議会や有識者会議は、関係する利益代表者を委員として集めているところが多いので、会議そのものが政治的な駆け引きの場になっている。しかし会議は基本的に多数決を避けて全員一致の形で物事を決めようとするので、会議を進行させたり、結論を出したりすること自体が、大変なこと。

最も大事なことは、会議のメンバーの「顔」。簡単にいえば、本人のプライドということだが、これをどのようにうまく扱うかによって、会議の成否が決まる。委員の顔、座長の顔を立てたり、潰したりしながら会議は進む。会議を進行させる役割は座長にあるから、座長がメンバーの顔を立てながら、結論に軟着陸させられるかどうかが大事。座長の手腕、事務局との連絡の密接さ、議論をきちんと聞いて論点を把握しているかどうか、いろんなことが座長の力を左右する。

基本的に日本の審議会のことが書かれていて、外国ではどうかという話はあまり触れられていないのだが、この本はとても外国語に訳しにくいだろう。日本的なコミュニケーションの細かい襞をあやつることで、会議は成り立つ。

著者は学者だが、この本はただ学者をやっていただけでは書けない。現場を知っている人が、分析的にものを見ていて初めて書ける本。おもしろかった。