天下無双の建築学入門

藤森照信『天下無双の建築学入門』、ちくま新書、2001


これは非常におもしろい本。建築の要素をいろいろ取り出して、なぜ建築がそのようにできているのかを歴史的に見ていく。

前半が古代の建築術で、石器による木の切り出し、基礎と土台、割り板、茅葺き等々がネタ。割り板が割れや節がない状態になっているのはおかしいのだという話には驚いた。良材を選んで使っているのだからそういうものだと思っていたが、著者によると「銘木」というのは日本でしか成立していない病気のような趣味だという。

後半は住宅建築の要素を取り上げて同じ作業をやっている。前半と後半でネタが違うのは、初出時の掲載誌が違うため。建材、床、畳、天井、窓、台所、便所、風呂等々、ほとんど知らなかったことばかり。なぜ日本の住宅は畳敷きなのか、洋間でも土足で上がらないのはなぜなのか、風呂はいつごろから住宅に備えられるようになったのか、天皇や大名のような貴人でも冬は火鉢だけで暖をとっていたこと、いちいち驚いた。

終わりの方で、風水と家相のことが書かれていて、日本の家相と中国や韓国の風水がどう違うのか、やっとわかった。とにかく勉強になるところばかり。