イラストでまなぶ!ロシア連邦軍

小泉悠、JSF、高町紫亜ほか『イラストでまなぶ!ロシア連邦軍』、ホビージャパン、2015


萌えイラストのはいった「イラストでまなぶ!」シリーズの本だが、これはよく書けている。2015年時点でのロシア連邦軍についての、最も包括的で詳しく書かれた本。

ロシア連邦軍の概要、組織、規模、陸軍、海軍、空軍の三軍種、戦略ロケット軍、航空宇宙防衛軍、空挺軍の三兵科、特殊部隊、最近ロシア軍が関わった紛争、今後のロシア軍の展望について節がたてられている。ロシア軍の編成、ドクトリン、装備についておよそのことがわかるし、実戦でのロシア軍の状態や軍改革についても、述べられている。

この本の性格上、やや装備中心の説明ではあるが、装備の説明としてはきちんとしている。また、それを補うだけのロシア軍の態勢やドクトリンの説明がついているので、ロシア連邦軍の全体像を知るために役に立つ本。

特に最近のウクライナ紛争やグルジア紛争についての記述は、まとまったものが少ないので非常に役に立つ。相手がウクライナグルジアのような「二流の軍隊」だとしても、ロシア軍はよく訓練され、装備、補給、即応態勢において優れており、優れた軍として、ロシアの政治的道具として十分役に立っていることがわかる。

しかしこの本、著者の中で実名を出しているのは、小泉悠氏だけで、他の著者はペンネーム(ハンドルネーム)。本を出すのであれば(しかも、内容のある本なのだから)、実名で出した方が著者自身のメリットになるのでは?実名や略歴がなくても、本の内容自体に傷がつくわけではないので、読者としてはかまわないですが。