日本政治とメディア

逢坂巌『日本政治とメディア』、中公新書、2014


これは労作。鳩山一郎(テレビ放送の開始が1952年)内閣から、第二次安倍内閣まで、メディアと政治の関係をまとめた本。メディアは新聞とテレビだが、やはり中心はテレビ。

1980年代以後は完全にテレビ政治。政権は内閣支持率のことをとにかく気にしていて、世論はテレビでどのように取り上げられるかによって態度を決めている。テレビ局ごとの報道姿勢の違いよりも、テレビ局がどういうネタに食いつくかで多くのことが決まっている。

テレビは、実物の映像を流すことができ、編集して同じネタを繰り返して放送するので、テレビを上手に使える人でないと、支持を上げることはできない。80年代以後の日本政治の歴史は、テレビに何を映させるかを使える人が権力を保持しつづけることができるということを、政治家自身が学習してきた過程である。

ネットは最後に少し出てくるだけ。現在のネットの普及率はテレビに及ばないし、ネットが政治に使われるようになったのは最近10年以内なので当然そういうことになる。しかし、橋下徹が、「ネットで直接世論を動かそうとするのではなく、自分のことを報じるメディアをネットでたたく戦術を使って、送り手側に影響を与えようとしている」という記述は非常に示唆に富む。

テレビがネットのネタを拾うようになれば、メディアの仕組みも変わっていく。テレビが威力を発揮するようになるまでに20年くらいかかったことを考えれば、あとしばらくの時間がかかるが、政治家のメディアの使い方も変わってくる。この本は、政治の世界で新聞がテレビに取って代わられる歴史を描いているので、それと二重写しになっていておもしろい。