ウィスキーと私
竹鶴政孝『ウィスキーと私』、NHK出版、2014
ドラマと違っているのは、イギリス留学時代の記述が中心になっていること。ウィスキー蒸溜所の歴史やどうやって製造法を学んだかということに半分近くの分量がとられている。
あとは実業家なのだから、当然会社のこと。ニッカのウィスキー事業が本格的に拡大したのは戦後のことなので、それ以後の事情が書かれている。また、摂津酒造の社長や、鳥井信治郎には、最大限の敬意が払われている。業界人なのだからこれも当然。
妻リタのことも言及されていて、出会いの様子や、その後の苦労のことも書かれているのだが、巻末に掲載されている、竹鶴政孝の孫、孝太郎の文章を読むと、本人の年譜に照らして明らかに事実でない記述(本人の文章では、リタの父は結婚に好意的だったことになっているが、実際には政孝とリタが出会う前に亡くなっている)があるとなっている。
「私の履歴書」は、自慢話がたくさん入っているものだから、「よくあること」だが、ちゃんと考証しないとそのままには受け取れないということ。本文、年譜の後に何人かが寄稿した文章が載っていて、星野直樹、野田卯一といった大物政治家のものもある。