風立ちぬ(映画)

風立ちぬ」、宮﨑駿監督、スタジオジブリ、2013


テレビで「風立ちぬ」を放送していたので見た。大傑作だわ。

飛行機設計者の堀越二郎の話と、堀辰雄風立ちぬ」を組み合わせて作ったおはなしだが、実話部分と創作部分の組み合わせ方がすばらしい。

特に、この映画は「ヒコーキ映画」でかつ「恋愛映画」でもあるのだが、その両面で超絶の出来。飛行機では、ユンカースの工場とG.38、特に機体内部の描写。カプローニとそのCa.60。九試単戦の試作初号機。これだけで、ごはん3杯どころかその3倍はいける。なにしろ、堀越二郎を主役にした映画なのに、零戦は、幻影と残骸の形で少し出てくるだけ。それでいて、設計者としての堀越二郎を描き切っている。

この映画では、飛行機以外にもいろんなものが飛んでいて、帽子や傘や紙飛行機や、いろいろあるのだが、その飛び方のきれいなこと。二郎と菜穂子が、それらをやりとりしている場面は本当に美しい。

二郎と菜穂子の恋愛も、萌え死ぬレベルのすばらしさ。出会いから別れまで、すべてが決まっている。この映画、堀越二郎の声は庵野秀明があてていて、芝居としては「いったいなにこれ?」のレベルなのだが、そんな大根役者がやっているのに、涙をしぼるような恋愛になっている。

こんな大傑作を長編映画最後の作品にしているのだから、宮﨑駿、おそろしい。宮﨑駿の作品を全部は見ていないが、これは頂点レベル。ここまでできるのか。完全に撃ちぬかれた。ソフトは買う。