芸術実行犯

Chim↑Pom『芸術実行犯』、朝日出版社、2012


先週の、このグループのメンバー、エリィのトークショーがおもしろかったので、会場にあった本を一冊買ってきた。この本の他にも、作品の写真集があったのだが、値段の高いものは後からでも買えるのと、とりあえず字だけの本を読んでみようと思って、これを買った。非常におもしろい。

エリィは、トークそのものはおもしろかったが、理屈の人ではないのと、ヤンキーっぽい見た目のおかげで、何を考えてやっているのかということはいまひとつ伝わっていなかった。この本は、その「考えていること」を伝えるもの。

震災後の発電所現場に行って旗やかかしを立ててくる作品も、思いつきのよさというだけでなく、社会でリアルタイムで進行していることに対する反射神経の早さ、「覚悟」のよさというものが反映していて、それはこのグループのそれまでの活動でつちかわれたもの。

広島の「ピカッ」は、顛末の検証本が出ているのでわかるが、それ以外の岡本太郎の作品への貼り付けや、地雷処理プロジェクトのねらいについていろいろ書いてあり、興味をもって読めた。

このグループのしていることは、社会にツメを立ててツメ跡を残すことであり、それを通じて考え方やものの見方をいじること。それを「実践」を通じてやる、ということ。

自分たち自身の思いつきだけでなく、外国での、このようなアートの作家や作品にちゃんと目を通していて、行為でアートすることの意味を戦略的に考えてやっている。この本は、Chim↑Pomの共著になっているが、理屈担当は、卯城竜太と林靖高なので、この本には2人の手がだいぶ入っている。マスメディアでは、かなり悪く解釈されるようなこと(日本社会は、とにかくジョークに厳しい)をやっているのだが、それも含めて考えてやっている。

トークショーの時に、映像は出ていたが、音声が出ていなかったのを、エリィが非常に残念がっていたことも、これでわかった。このグループの仕事にはライブ感がとても大切。

200ページもない本だが、内容が濃い。今度このグループのビデオを探してみる。