安倍官邸の正体

田崎史郎『安倍官邸の正体』、講談社現代新書、2014


著者は1950年生まれ、時事時事通信編集委員。テレビのコメンテーターとしてもよく出ている人。

本の内容の多くは、安倍政権のと関係者、特に安倍首相本人と、菅官房長官に対するインタビューで、構成されている。

古手の政治記者によって、書かれた本だけのことはあり、政権内部にもちゃんと食い込んでるし、民主党政権や、麻生政権以前の自民党政権と比べて、第2次安倍政権がどう違うのかということを、掘り下げて書いている。

靖国神社参拝のような、大きな決断の裏側や、著者が、「強硬保守」という、右派勢力との関係、集団的自衛権問題や、武器輸出三原則の実質的な撤廃、特定秘密保護法などの、安倍政権のいわゆる右寄り政策が形成されている内幕にはかなり踏み込んだ記述がなされている。

確かに右派の政権ではあるが、第1次安倍内閣とは違って、やろうとしていることを一方的に通すのではなく、内閣支持率や世論動向を見ながら、できることとできないことを見極めて、政権運営をやっている。唯一強行したのは、靖国神社参拝問題ぐらい。

首相官邸スタッフのチームワークや、人事政策も、きちんと機能している。特に、菅官房長官が、全体の交通整理役として、よく役割を果たしている。

政局と政策の両方に対して、よく目の行きとどいた書き方になっていて、政治ジャーナリズムの一つのスタンダードになっている。やはり政策過程をわかっているだけではダメで、政局との絡みで、どの政策がどういうスケジュールで流れているかが分からないと、政治がわかったことにはならない。

この本を読んで、安倍政権に立場が近すぎると考える人もいるだろうが、政権内部に立ち入って事実を明らかにしてることが重要なのであり、政権を批判するか賛成するかは、それとは別の問題。

まず事実がちゃんと明らかになっているかどうかが問題で、それが出来ていないと、他の事も分からない。これが出来ていない本や新聞記事は多いから、この本は貴重な存在。