エリイ(Chim↑Pom)トークショー

「エリイ(Chim↑Pom)トークショー」、鞆の津ミュージアム、2015.2.8


Chim↑Pomのエリイによるトークショー。あまり期待しないで行ってみたが、とてもおもしろかった。

一人でしゃべるのではなく、主催の鞆の津ミュージアム、櫛野展正氏との対談形式で進行。エリイ氏は、お嬢様なお育ちだそうで、Chim↑Pomの中では唯一美大出なのに、話し方がかなりヤンキーっぽく、このギャップもおもしろい。

基本的には、これまでのChim↑Pomの活動をスライドで出しながら、それに対してコメントしていく。剥製のドブネズミを黄色く塗ってピカチュウっぽく仕立てた「スーパーラット」やら、広島の空にひこうき雲で「ピカッ」と文字を描いた作品、渋谷駅の岡本太郎壁画「明日の神話」に福島原発事故っぽい絵を「付け足した」作品などなど。

バカっぽく扱われることが多く、このエリイ氏のしゃべり方もかなりバカっぽくやっているのだが、飛行機雲のために飛行機とパイロットを借りたり、カンボジアの地雷処理プロジェクトに参加したり、インドネシアの廃棄物処分場でイベントをやったり、かなり準備やらお金がかかること、社会的な「発言」になる仕事が多く、計算はともかく、いろいろ考えて準備しなければできないことをやっている。

一番インパクトがあったのは、3.11から1ヶ月もたたない2011年4月はじめに、実際に福島第一原発まで行ってきて、まだ煙が出ている発電所が見通せる展望台に上がって、放射性物質のハザードマークを描いた旗を立てたり、防護服(雨合羽を貼り付けただけの「自家製」)をかかしにして、ご近所においてきたりという活動。これを実行した数日後に、発電所20キロ圏内は危険区域指定されたので、ギリギリのタイミングでやっている。NHKほかのカメラ映像は大型の望遠レンズを使って、30キロ離れたところから映しているので、ここまで発電所に接近した人は、東電や消防、警備関係者以外はほぼ皆無のはず。決断の早さと機動力がなければできない仕事。

この団体の活動は、机上プランで考えたことを「とにかく実行する」行動力と機動力で成り立っているもの。見た目がバカっぽく見える分も含めておもしろい。逆に「きれいな絵を描く」訓練をしてきた人には、こういう活動はなかなかできないだろう。一昨年、広島でも展覧会があったのに、行ってなかった。これは本当にもったいないことをした。