食わず嫌いのためのバレエ入門

守山実花『食わず嫌いのためのバレエ入門』、光文社新書、2003


バレエを見たことがない、またはそんなものは見られるかと決めつけている人のための、「とにかくバレエを見に行け」という命令書。

非常に親切に書かれている。バレエ嫌いの理由を論破することから始まって、演目の解説(とても読みやすい)、劇場に行く時のためのティップス、主要なダンサーと振付家の紹介、海外のオペラハウスの紹介まで、バレエを見に行く寸前のところまで面倒をみてくれている。

バレエはいままで実演を一度か二度しか見たことがなく、それはけっこう面白かった(新国立劇場の、「ロミオ」と「ジゼル」?ちゃんと覚えていない)。しかし、バレエのいい公演は東京ばかり。遠い。どうせ行くのならオペラを見たい。劇場のチケット代よりも劇場に行くコストの方が高いのだから、貴重な機会をちょっとでもムダにしたくない。

しかも、オペラもそうだが、バレエはテレビで録画を見るよりも実演の方が圧倒的におもしろい。そんなものを田舎の人が趣味にするのは厳しいのだ。ロイヤル・オペラの録画を劇場で上映するプログラムに行くくらいがせいぜい。

それでもこの本を読むと、「なんでバレエを見に行かないの?もったいないよ」と呼びかけられているので、見に行かざるを得ない気分にさせられる。そのくらいかゆいところに手がとどくような本。今から10年前に出版された本だから、ダンサーはいまは全盛期ではないだろうし(それを考慮して、振付家の方が重点的に紹介されている)、予習用の映像ソフトも今が旬のものではないはず。しかし、この本の誘いは魅力的。あえて「クラシックバレエ」に対象を絞っているところがいい。

とりあえず、ロイヤル・オペラの録画上演を見よう。実演を見に行くのは、それからでいいわ。バレエ関連本も豊富に紹介されているので、予習はおなかいっぱいになるまでできるのだ。