広島今昔散歩

原島広至『広島今昔散歩』、中経の文庫、2014


これは非常におもしろい本。著者は、この「○○今昔散歩」というシリーズ本を出していて、他に、東京、神戸、横浜、大阪、名古屋、百人一首東京スカイツリーと7冊あり、この本が8冊目。

副題に、「彩色絵はがき、古地図から眺める」とあって、主に著者が個人で収集した古地図、彩色絵はがきの図版を掲げ、同じアングル、縮尺の現在の写真、地図を並べて、同じ場所が今と昔でどのように違っているかを示したもの。これは楽しい。

写真がたくさん残っているのは、広島城近辺で、原爆でなくなってしまう前の広島城、特に日清戦争天皇の御座所や大本営があった頃の絵図がある。今は県庁やそごう、パセーラなどの建物が立っている地区は、昔は練兵場だったので、何もない。日清戦捷記念碑が立っているだけ。これも、戦時中の金属供出で終戦直前には台座部分だけになっていた。

原爆ドーム中島町(ドームのあたりは、戦前は商業地)、元安橋、紙屋町、八丁堀、広島駅、縮景園など、市内各地の昔の姿が写っているが、見たことがない写真が多く、目が離せない。

広島市だけでなく、宮島、呉、郡山城阯、尾道、福山、鞆の浦、三次、帝釈峡、三段峡などの写真もある。変わっていないのは帝釈峡や三段峡のような自然だけ。

これが残っているのは、昔観光地だったところだけだから、観光地ではなかったところの写真を手に入れるのはむずかしいだろう。つまり書籍化できる場所は限られているということ。

しかし広島でもできるのだから、京都や福岡、札幌、仙台、金沢など、ちょっと大きな町だと資料はてにはいりそう。こんなに手軽に昔のカラー図版を見られるのはありがたいから、このシリーズはどんどん出してほしい。