日韓・日朝関係の課題

荒井利明『日韓・日朝関係の課題』、日中出版、2005


著者は、読売新聞記者。ちょっと前に書かれた本だが、日韓関係と日朝関係を並列的に扱った本があまりないので読んでみた。

およそ9年前に出た本だから、載っている事実が今とは違うことは当然だが、それ以上に違うことは、この頃、六者協議はまだ始まったばかり、中国のGDPは日本の約3分の1。日韓関係も、今日のように悲惨なことになるとは誰も思っていなかった時期だから、著者が「日中韓の連携は可能か」という章を立てていて、それが可能で、かつ必要だという前提で議論をしていること。

六者協議の枠組みで北朝鮮は包摂できるだろうという楽観的な見方にまだ現実性があって、その上でアメリカ、ロシアも含めた互恵的な関係が立てられるという見通しが立っていた時期が、昔はあったのだ。

日中韓三カ国による、自由貿易圏の構築というプランもかなりまじめに説かれている。経済的には相互依存しているのだから、これもありえた発想。安全保障でも経済でも提携できると昔は思われていたのだ。もちろん、歴史問題やナショナリズムが高揚している事情は当時からあったから、そういう問題にも言及されている。しかし、それは政治的意思があればなんとかなると著者は考えている。

最初はボタンの掛け違いでも、どんどん違うコースに踏み出していけば簡単には元には戻らない。著者は1947年生まれだというので、もう読売新聞は辞めているだろうが、今の読売の論調からは、こんな話はどこをつついても出てこない。たった9年前の近過去の話ですら、この通り。こういうことは普通にあるので、今は役に立ちそうもない本も読んでおくもの。