これでいいのか広島県 広島市

川口有紀編『日本の特別地域 特別編集31 これでいいのか広島県 広島市』、マイクロマガジン社、2012


このシリーズは電子化されているので、ためしに大阪市のほかにもう一冊買ってみたが、これでだいたいわかった。この本は、住んでいない人にはいいのかもしれないが、住んでいる人にとっては内容がぬるすぎる。

最初の部分の地図には福山市尾道市のものもついているが、広島、尾道、福山はまるっきり別の町で、同じ県というだけ。この本の中でも、「安芸と備後は違う」と書いてあるが、だったら備後のことは別の巻に譲ればいいのに。広島ネタの映画にもちょっと言及されているが、大林宣彦尾道三部作が最初に言及されている。それ、広島の映画じゃないし、

広島市ロケの映画は少ししか言及されおらず、原爆ネタでも「原爆の子」「24時間の情事」のような全編広島ロケの重要作が抜けている。「仁義なき戦い」も、「呉がロケ地」と書いてあり、確かに呉市はロケ地になっているが、広島市もロケ地になっているし、だいたいロケの殆どは京都市でしょ。

あとは、お好み焼きや広島カープのような定番ネタだが、お好み焼き屋の起源、どういう経緯で広島市全体に広がっていったのかなど、重要な事が書かれていない。さらに広島市では絶対使われない「広島焼き」という言葉が使われている。ここを読んだだけで、書いた人が細かいことを知らないことがわかってしまう。

都市計画の問題とか、路面電車が遅すぎるとか、住んでいる人は知っていることが出ていない。こういう本はその町の出身者だから書けるというものではなく、住んでいるか、それと同等のレベルの取材がないと書けないはず。やっぱりツメが甘いわ。