「超常現象」を本気で科学する

石川幹人『「超常現象」を本気で科学する』、新潮新書、2014


非常におもしろい本。著者は、実際に超心理学の研究をしている人。

著者によれば、「ツキ」「スランプ」は、単に偶然に理由をつけているだけの錯覚。お守りやゲン担ぎも同様の現象。「夢のお告げ」や「幽体離脱」、「臨死体験」は、体験者の精神状態の産物だという。

その上で、著者が提案するのは、「超能力現象」が「あるのか/ないのか」という議論を一回離れて考えるべきだということ。「テレパシー」「透視」「念力」は、統計的に有意な範囲で、「ある」といえるが、ランダムな結果を2%から3%外れているにすぎず、実用的に役に立つものではないという。

むしろ、「超能力現象」は、幽霊体験と同じく、人間の無意識がある局面で露呈しているもの。新しいアイディアが生まれる過程や、スポーツでのスーパープレーが生まれるときには、無意識が作用している。無意識はランダムに生まれるものではなく、意識の働きによってある程度「手懐ける」ことができる。達人は、意識的に課題に集中することによって、無意識の創造性を引き出している。

超能力現象もこれで説明できるというのが著者の立場。そうなると、「超能力はあるか、ないか」の議論は横において、「どのような条件で超能力現象が出やすくなるか」「超能力現象を他の状況にどう活かせるか」を考えることで、人間の創造性を解明していくことができるという。

いままで超能力現象に対しては、懐疑論の立場しか読んでいなかったので、この立場は非常に新鮮。超能力を白黒論争にせず、創造性の問題と組み合わせることで、人間の能力の知られていない部分を解明することに役立てられるということになると、超心理学が、人間科学の重要な部分として機能する可能性がひらかれる。

超心理学、超能力に対する認識を改めさせられた本。