日曜美術館 明治の工芸 知られざる超絶技巧

日曜美術館」 「明治の工芸 知られざる超絶技巧」、NHKEテレ、2014.5.18


ちょっと興味をひかれたので見てみた、この回の日曜美術館、これはちょっと狂った世界。

三井記念美術館で現在開催されている展覧会、「超絶技巧!明治工芸の粋 ─村田コレクション一挙公開─」の展示品を中心に、明治時代の工芸品を紹介する番組だ。牙彫(象牙彫刻)、自在置物(可動式の金工品)、刺繍絵画が登場するが、どれもクレージーな出来栄え。

牙彫は、ゲストで出てきた彫刻家が「人間3Dプリンタ」と言っていたが、まさにそのとおり。どうやって作ったのか、想像がつかないレベル。人間機械だ。作家の安藤緑山は、生年もはっきりしないような職人。作品は、「本物よりもリアル」。彫刻技術だけでなく、彩色がすごい。番組中では、安藤緑山の技法を再現しようとしている彫刻家のトライアルが出ていて、卓越した技術を少しだけ見せてくれる。

自在は、司会の井浦新が実際に展覧会に出向いて、実物を触っている。伊勢海老、龍、蛇、鯉などだが、関節ごと、甲羅、鱗ごとに可動する。これは置いているものを見ただけではわからず、実際に動かしてみないと技術のすごさを知ることができない。もとは甲冑師が、自分の技術を転用して作っていたもの。現在でも現役で作っている人がいて、代々この仕事をしている金工師。この作業は本当に細かく、金属の性質や細かいコツを熟知していないとできないもの。

さらに開いた口が塞がらないのは、刺繍絵画。これは刺繍で絵を描くというとんでもないもの。遠目には絵にしか見えないが、視点が変わると立体だということがわかる。しかも、絹糸の光沢や立体感がすごい。これも実際の制作を行っている人がいるので、現場をカメラで撮影しているが、気の遠くなるレベルの作業。しかも作品は非常に大きく、これを作成するのには、信じがたい作業量が必要。下絵は竹内栖鳳が描いていて、下絵も残っているので比較しているが、下絵が生きているかのように再現されている。

解説は、この展覧会の監修者でもある山下裕二。的確な解説で文句なし。

この番組は、現在の、井浦新伊東敏恵コンビになって、非常によくなったと思う。特に井浦新がいい。この回を見逃さなくてよかった。