全面改訂 超簡単 お金の運用術

山崎元『全面改訂 超簡単 お金の運用術』、朝日新書、2013


非常によく書けた投資本。これまでこの分野の本は、木村剛『投資戦略の発想法』講談社、2001(のち2度改版)を読んでいて、基本的な考え方はそれで十分だと思っていた。その考えは今でも変わらないが、この本は、似た切り口でいながら、最近の話題について言及されているし、著者の考え方そのものに学ぶべきところが多い。

結論が最初に書かれていて、当座(生活費の3ヶ月分)を普通預金とし、残り資産をリスク運用分と無リスク運用分に分ける(比率は自分の考えで決める)。リスク資産の半分をTOPIX連動ETFで、残りの半分は先進国株式のインデックスファンドで運用する。無リスク資産は10年もの国債MRFにしておく、というもの。

この運用法のもとになる考え方が結論の後で説明されている。一般投資家は資産運用をあまり重大なこととは考えないという前提で、コストの高い商品、仕組みが複雑で自分に理解できない商品を買わないこと、資金が必要な時は、金融商品は買値に関係なく売却して使うべきであること、証券会社のセールスマンのように利害関係のある人からのアドバイスからは距離をおくこと、などが説かれている。

著者の基本的なスタンスは、「儲ける話は何かではなく、明らかに損である話を見抜けることが大事」というもの。非常に説得的。自分も証券会社にはさんざんおかしな金融商品を勧められてきたので、このことはよくわかる。

自分として一番勉強になったのは、「ギャンブルとの付き合い方」を説明している節。自分はギャンブルはやらないのが吉と考えていたが、著者はギャンブルは2つの点で人間にとってよいとする。1つはいくつかのギャンブルでは真剣に頭を使うということ、もう1つは自分の意思どおりにならないことがあることを実感として知るためにギャンブルは有用ということ。ギャンブルをまったくやらない人生はつまらないものだと断言している。確かに、人生そのものにギャンブルの要素は不可避なので、ギャンブルそのものを拒否するという態度はあまり合理的でない。自分でリスク管理できる範囲でやればいいし、ギャンブルのコストは人生を楽しむためのものと考えればよい。

本論部分以外にも、多くのことを教えてくれる良書。