史実 ”戦火の馬”

BS世界のドキュメンタリー 第一次世界大戦100年」、「史実”専科の馬”」


昨日まで放送していた「カラーでよみがえる第一次世界大戦」にもう一本追加で、こちらは第一次世界大戦における馬のおはなし。スピルバーグ「戦火の馬」を見ていないのだが、こちらは創作ではなくドキュメンタリーなので、問題はなし。

イギリスから大量に西部戦線に連れて行かれた馬。人間でもシェルショックというものがあるのに、馬は砲弾の衝撃に耐えられないのではないかと思ったが、砲弾の中でもちゃんと騎乗者の意思に従って動く馬はたくさんいた。

しかも騎兵はまだ現役だったので、歩兵が後退する間、歩兵の退却を援護するために、騎兵は突撃させられた。戦争画では馬はかっこよくドイツ軍にぶつかっているように描かれているが、実際は当然ながら機関銃になぎ倒されてしまい、突撃は挫折。これで乗馬突撃は簡単には行えなくなった。

一方、馬のほとんどは騎兵にではなく、輓馬として輸送用に使われていた。98%が輜重部隊の馬。しかし、ドイツ軍の砲兵は輜重部隊の交通路を知っていたので、通り道は集中的に砲撃されていた。当然、馬の損害は甚大。

騎兵は、ソンム戦でも敵の前線を突破するための予備として控えていたため、非常にストレスがかかっていた。しかし、騎兵にとっても輜重兵にとっても、最大の損害の原因になっていたのは、病気、食料と水の不足、過酷な気候と環境。ほとんどの馬はこれでバタバタ死んだ。さらにドイツ軍は、撤退した後に、馬を傷つけるため、大きなまきびしを撒いていた。これを踏んでしまうと、馬は傷口から感染症にかかって死んでしまう。

もう助からないとわかった馬は、銃で処分されるのだが、兵士は馬と感情的に結びついていたので、射殺を嫌がった。馬の処分は将校の仕事で、馬の処分法はマニュアルに書かれていた。頭部を銃で一撃しておわり。

モレイユの森では、後退するイギリス軍を援護するためにカナダ軍の騎兵3個連隊がドイツ軍に突撃。今度はドイツ軍を止めた。大戦最後の100日間は、塹壕戦から解放されたので、騎兵は本来の活躍を果たすことができた。イギリス軍の馬の損害は、西部戦線だけで25万頭。しかも終戦時にいた軍馬は多すぎて軍が維持することができず、一部はフランスで射殺されて食料にされた。

この番組の主役は馬なので、人間が死ぬよりさらに鬱展開。動物が死ぬのは、かなり涙腺がゆるむ。映画「戦火の馬」のモデルになった馬は天寿を全うして死んだが、ほとんどの馬は使い捨て。哀れすぎだ。