ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い

Hagex『2ch発言小町はてな、ヤフトピ ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』、アスキー新書、2014


ネット釣り師の手口を説明した本。しかし、この本のほとんどを占める、「ネット釣り師の手口とそれを見破る方法」は、そんなにおもしろくない。なぜなら、この本でも主に言及されている、2ch発言小町は、「釣りだらけ」であることは周知の事実で、読む側はそれを織り込み済みで読んでいる。最初から、「半分ネタでしょ」と思って読んでいるものを、「それはネタですよ」と言われても、そんなにおもしろくはない。

また、この本で言及されている「釣り師を見分ける手口」は、見分けること自体に手間がかかりすぎる。もちろん、釣り師の側は「釣りであると簡単にわからないように」釣っているので、それが簡単に見分けられないのはあたりまえ。しかし冗談だろうと思っているものを手間をかけて、本当に冗談かどうか確かめるというようなややこしいことを普通の人はするだろうか。

著者も「釣りかどうかを確かめることにそれほど価値はない」ことは認めている。その上で「デマ」を見分けることは重要だと書いているのだが、2ch発言小町にかぎらず、ネットはデマだらけで、それが当たり前。震災と原発事故で実証済みだ。デマかどうかは、その分野についてある程度知っていて、おかしいことをおかしいと判別できる人でなければわからない。画像の付随情報をチェックすることがけっこう役に立つという部分は勉強になったが。

この本で唯一おもしろかったのは、「本物の釣り師」を連れてきて、著者と編集者の3人で鼎談している部分。釣り師は自称30代女性で、子供3人、年収2000万円という人。釣り堀は主に発言小町。釣りを実際にしていた時は、1日2トピを立てる(発言小町は、運営側が承認しないとトピは立てられないので、けっこうなハードル)ことを自分に義務として課していたという。これはかなり大変で、立てた後は放置していいものではなく、トピのメンテナンスが必要なので、同時に20くらいのトピの管理をしなければならなかったという。これは実生活に支障が出るレベルで、そのために釣り師はやめました、という話。

なぜ釣り師を続けていたのかという理由は、最初は楽しみで始めたが、途中でハマっていくにつれて、高度な釣りをすることが自分の義務のように思えてきたからだという。これはとてもよくわかる。釣りの反応はダイレクトにわかるので、そのコミュニケーションがおもしろくなって、勝手にやめられなくなってしまうのだ。

発言小町は初心者でも釣り師として参入しやすく、2chにプロ級の釣り師が多くいるのとは対照的だという。これも納得。マイナビニュースは半分くらい釣り、ツイッターも釣りだらけと言っている。お金のためならまあ仕方ないが、趣味で釣り師の道に入ってハマってしまうのは大変だ。楽しいというよりは苦しそう。