ヤンキー化する日本

斎藤環『ヤンキー化する日本』、角川oneテーマ21、2014


これは良書。斎藤環が「ヤンキー」をネタにして、6人の論客と対談するのだが、このセレクションが、村上隆、デーブ・スペクター、溝口敦、海猫沢めろん隈研吾、與那覇潤、というちょっと見ただけではまったく一貫性が感じられない人々。しかし、この組み合わせが絶妙で、どの対談からも貴重な発見がある。

那覇潤との話が、自分としては一番腑に落ちたが、おもしろかったのは隈研吾との対談。建築のことはまったくわかっていないのだが、「歌舞伎座と銭湯、高級和風旅館の建築は、同根で、ヤンキーの好きなスーパーシンメトリー」だとか、「日光東照宮桂離宮は、これも同根で、テーマパーク性のあるキワモノ建築」だとか、ぜんぜんわかっていなかったことを山ほど教えられた。

どうやってこのメンバーを揃えられたのか、不思議なくらい、対談者が斎藤環と平仄の合う話をしている。これは斎藤環だけではなく、編集者の力が大きいのだろう。

斎藤環の「ヤンキー論」は、朝日新聞に掲載された「自民党ヤンキー論」で初めて知ったのだが、この本を読むと、日本社会の広い領域をこれで説明できる、非常に有効な概念だと感じる。地元愛、母性、ファンシー、コミュ力、保守志向、現実的、反教養主義、気合い、バッドテイストという「ヤンキー要素」は、今の日本に蔓延しているが、それらがヤンキー性の一言できれいに説明される過程は圧巻。

著者の「ヤンキー論」のオリジナル、『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』を何が何でも読まなければいけない。これは今からたのしみ。