米・英・ソ秘密兵器

ブライアン・フォード(野田昌宏訳)『米・英・ソ秘密兵器 レーダー、ミサイルから原爆まで』、サンケイ出版、1972


なつかしの「赤本」こと、バランタイン第二次世界大戦ブックスの第38巻。手元にある本は1983年の13刷。けっこうこの巻も売れていたのだ。

著者は、このシリーズで『V1号V2号 ドイツ秘密兵器』を書いているブライアン・フォード。このシリーズの本には著者紹介がついていたと思っていたが、この巻にはない。訳者は野田昌宏だ。こんな仕事もしていたのか。訳者あとがきに、父親が九州帝大工学部教授で、戦時中にアメリカの兵器を回収して分析していたと書かれている。

ドイツ軍の兵器開発の話に比べて、派手で変わった兵器は少ないが、連合国の兵器開発はちゃんと役に立つことをやっていて、現に戦局に結果が出ている。原爆開発は当然出ているが、電波航法システム、レーダー、アスディック(ソナー)、航空写真偵察、抗生物質等々、連合国の発明はちゃんと働いている。

もちろん、役に立たなかった開発計画もちゃんと取り上げられていて、お約束のパンジャンドラム、防壁破壊用自爆装軌艇「アリゲーター」、対空用火炎放射器、氷山空母「ハバクク」といったあたりがネタにされている。これらの役立たずの計画は、なぜそれがうまくいかないのかをちゃんと説明してあって丁寧。

あまり分析的な本ではないが、ドイツの兵器開発がヒトラーの個人的な思いつきや好みに振り回されていたのに対して、連合国の開発は、失敗もあったが、ちゃんと科学技術のわかる人が適切な地位にいて、アドバイスを出していた。原爆の可能性に気づいて組織的に開発計画を進められたのは、その成果。日本は何もできなかったので、連合国と比べると話にならない。勝った側にはそれなりの理由があったということ。