頼山陽が愛した『平曲の世界』

頼山陽が愛した『平曲の世界』」、頼山陽史跡資料館、2014.3.22


これは、平曲(琵琶を弾きながら平家物語を語る芸能)を語っている荒尾努が、頼山陽史跡資料館で行ったレクチャー・コンサート。資料館のロビーでしたので、客は30人くらいか。

1時間半あったので、「祇園精舎」、「入道逝去」、「敦盛最期」、「宇治川」と4曲も語ってくれた。もっとも、基本的にはどれも抜粋だが。

初心者でもわかるように、平曲の概要から、平家琵琶雅楽の琵琶や、薩摩琵琶などとは違うもの)の特徴、曲のあらすじまで、ちゃんと説明した上で語ってくれたので、その分平曲語りは短め。それでも「入道逝去」は、30分近く語ってもらったのでかなりおなかいっぱい。

これは平家物語の詞章をふしをつけて語るものなので、まず平家のおはなしを知っている必要がある。琵琶はジャンジャンかき鳴らすのではなく、あくまで平曲語りに彩りを添えるものなので、浄瑠璃節みたいなものとはかなり違う。平家物語そのものを味わうことが基本。

平家物語そのものは、中世文学の中ではむずかしい方ではない。しかし、このコンサートでは、語る部分のコピーが配られていたから読めば分かるのだが、語りを聞くだけで内容が分かるかといえば、全然物語を知らないと無理だろう。逆に、平曲語りが流行していた頃、つまり室町時代とか、江戸時代には、印刷された形で平家を読むことはあまりできなかったわけで、この語りを通して平家物語が伝わっていったのだから、聞く側は真剣だったろうし、それなりの教養も求められただろう。

客はみな、おばあさんとおじいさんで、ちょっとだけ子供連れの母親が来ていた。プロとしてこの芸を伝えるのは難しいが、何しろ伝統的な方法に従う平曲語りは、この荒尾氏お一人くらいなものなのだ。金田一春彦が、平曲語りを習っていて、荒尾氏はその孫弟子ということになる。

荒尾氏も最近弟子を取られたそうなので、なんとか次の代には続いていくが、もう蜘蛛の糸にぶら下がっているようなもの。なくなるにはあまりにも惜しい芸なので、長く続けていただきたいと思う。

とりあえず、「宇治川」のCDを買ったので、後でゆっくり聞くのがたのしみ。

ちなみに、下のリンクは、YouTubeにおいてある、岩佐鶴丈氏の語り。語り方も琵琶も、荒尾氏とはかなり違う印象を受ける。
https://www.youtube.com/watch?v=5HGe_MI3akM