上野松坂屋 屋上遊園

「上野松坂屋 屋上遊園 閉店日」、2014.3.11


上野の松坂屋南館の屋上にあった遊園地が3月11日で閉鎖されるので、行ってきた。

ここは屋上遊園地としてはそんなに大きなところではなく、遊具も、子供用汽車が2本あったほかは、バッテリーカーと、100円入れるとガタゴト揺れる遊具、それにクレーンゲームやら何やらがあっただけ。屋上遊園地としては、蒲田の東急プラザにあったもののほうがずっと雰囲気のいいところだった。

しかし蒲田東急プラザは誰も知らないうちに、3月2日で閉園。これは先日の朝日新聞の記事で初めて知った。マイナーな遊園地は誰にも知られることなく、こうやって消えて行くのだ。一方松坂屋の方は、多少
都心に近いところにあったおかげで、閉園前に新聞にも取り上げられ、自分も行くことができた。事前に閉園を知ることができて、最後の日に立ち会えただけでもありがたいと思わなければならないのだ。

大震災の3年目の記念日、みなさまが黙祷している間も、この遊園地ではそういうこともなく、いつものガラガラ状態ではないが、かといって混んでいるわけでもなく、地味に最後の日が過ぎて行った。バッテリーカーが走るエリアは、落書きしほうだいになっていて、閉園を惜しむ人たちがいろんな思いをマジックで書きつけていた。遊園地は一段高いところにあるのだが、その下にある庇には小さい旗がいくつもかかっていて、それにもみなさんの落書き。そして、屋内にある壁には、すでに閉園してこの世にはないものも含めて、いろいろな屋上遊園地の写真が、ひとこと添えてパネル展示されていた。

当日、さかんに写真を撮っていた人がいたので、尋ねてみたら、冬コミで販売されていた写真集「おくじょう」の作家だった。壁に貼ってあったパネルもこの人の写真だろう。聞くと、もう10年くらい屋上遊園地の写真を撮っているのだという。この10年は屋上遊園地の断末魔の期間で、残されていたところはだいたい潰れたから、記録を残せるギリギリの時間だったことになる。

バイキンマンのバッテリーカーと、2本あった汽車に乗って、遊園地最後の日を味わってから帰った。本当は閉園時までいたかったのだが、さすがにその暇はない。松坂屋はバーゲンセールだったので、服を少し買って帰った。これで東京近辺の屋上遊園地で、残っているのは、吉祥寺の東急、新宿の京王、それに川越の丸広デパートだけ。これもいつまであるかわからない。とにかく川越の丸広には行かないと。

以下は、東京新聞の記事。無理やり震災にくっつけているのが嫌だが、このくらいはしかたない。


屋上遊園85年で幕 松坂屋上野店、11日惜しまれ…

2014年3月8日 夕刊


11日で閉園になる松坂屋上野店の屋上遊園=8日、東京都台東区で(淡路久喜撮影)

 一九二九(昭和四)年から買い物客らを楽しませてきた、松坂屋上野店(東京都台東区)の屋上遊園が十一日、八十五年の歴史に幕を閉じる。遊園地のあるビルの再開発が理由で、建て替え後は再開しないという。関係者からは「街の象徴だった」などと惜しむ声が相次いでいる。 (志村彰太)
 屋上遊園は、二三年の関東大震災で全焼した上野店本館を再建した際に造られた。当時は滑り台や動物のおりがあり、遊具やゲームが中心の現在の姿とは大きく異なっていた。
 戦災を免れ、五七年に増築した南館に移設。遊具や設備は随時入れ替えてきたものの、ずっと来園者を見守り続けてきたため、時代を感じさせるものが多い。昭和三十年代の乗り物が現役で活躍。六四年の東京五輪で万国旗を飾る際に使われたポールも、なぜか園内の一角に移設されている。
 「子どものころ、仕事で忙しい両親に代わって、おばあちゃんに、よく連れてきてもらった」と、上野で生まれ育った飲食店経営、前川弘美さん(51)は懐かしむ。カブトムシやハムスターなど昆虫や小動物の販売所、焼きそば屋台などもあり、十円玉を握り締めて行くのが楽しみだった。「上野のシンボルだったから、なくなるのは残念」
 七年前から屋上遊園の店長を務める斎藤睦さん(44)は「東日本大震災のときが最も印象深い」と感傷に浸る。地震から二日後に営業再開を控えていたが、世間は自粛ムードで電力不足も叫ばれていた。「営業していいものか…」。節電を意識し一部のゲームの電源を切って開園すると、真っ先に訪れた親子が「ここがやっててよかった」と涙した。子どもを見ると、ストレスからようやく解放された表情に見えた。「自分は良い仕事しているんだな」と、あらためてやりがいを感じた。
 閉園が知れ渡ると、斎藤さんは常連客に「こういうところがあってよかった」と話し掛けられるという。再開発後のビルにはファッション店や映画館が入り、屋上遊園は姿を消す。斎藤さんは「ここは昔から変わらず子どもを受け入れてきた。大人になったときに、こんな場所があったなと思い出してくれれば」と、目を潤ませた。
 松坂屋広報によると、ほかに都内の百貨店で屋上遊園があるのは、京王百貨店新宿店(新宿区)と東急百貨店吉祥寺店(武蔵野市)の二店を残すのみという。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014030802000249.html