文楽 生写朝顔話

文楽、平成二六年三月地方公演、「生写朝顔話」

   明石船別れの段、
   笑い薬の段、
   宿屋の段、
   大井川の段


   豊竹嶋大夫、豊竹富助、豊竹靖大夫、豊竹咲大夫、豊澤龍事、鶴澤清丈、鶴澤燕三ほか、
   アステールプラザ中ホール、2014.3.7


三月は文楽が広島に来てくれる月なので、いそいそと行ってきた。昼の部だけで、夜の部(こちらは、「ひらかな盛衰記」)には行けなかった。

今回から、とうとう浄瑠璃の詞章が、液晶装置で客席から見られるようになった。これは非常に助かる。もちろん、これがないとぜんぜんわからないというものではないのだが、語りにところどころわからないところがあり、なんとか理解しようとパンフレットに載っている床本を首っ引きで眺めていることがよくあった。

これをやると当然、人形には目がおろそかになってしまう。浄瑠璃に慣れている人はいらないのだろうが、あまり聞いていない人にとっては、このおかげでそれほど視線を移さずに、舞台の人形と浄瑠璃を両方わかるようになった。最近、文楽補助金問題でうるさいニュースが続いていたが、この字幕装置がその副産物であるのなら、それだけでありがたいこと。

今回の「生写朝顔話」(しょううつしあさがおばなし)は、まるっきり知らない演目。熊沢蕃山をモデルにお家騒動とすれ違いの恋をからめた時代物。と言っても、今回の公演で取り上げられた段は、お家騒動の部分はほとんど省かれていて、阿曽次郎と深雪の恋物語の部分ばかり。

昼公演は、休憩を入れて、3時間40分ほどもあった。なぜか最初の明石船別れの段が終わったところで15分休憩。その後の笑い薬の段、宿屋の段はそれぞれ50分以上かかる長い段。その後で大井川の段が来る。なんで笑い薬の段の後で休憩にしてくれないのかよくわからない。ここは話がつながっているところなので、途中で間を置きたくなかったのかもしれない。

宿屋の段が、切り場。嶋大夫の語りは汗が客席に飛び散ってきそうな力の入ったもの。ここが聞けてとてもよかった。

パンフレットはちょっとだけいつもと違っていて、この「生写朝顔話」のストーリーが地図と図解入りのカラーページで載っていた。ちょっとだけだが、客にわかりやすくしようと努力しているのだ。

途中ちょっと寝てしまったが、切り場はなんとか聞けて助かった。時間があったら国立文楽劇場に行きたいが、住大夫、引退してしまってざんねん。生で聞いてみたかったのに。会場では住大夫のCDやDVDをたくさん売っていた。