人間革命(1973)

「人間革命」、丹波哲郎新珠三千代仲代達矢ほか出演、舛田利雄監督、シナノ企画東宝、1973


前から見たかった、映画「人間革命」、DVDを手に入れてやっと見ることができた。

この映画、最初の場面は戸田城聖丹波哲郎)が出獄してくるところから始まるのだが、ナレーション、字幕含め、まったく説明がない。映画が始まって40分ほど、まったく説明がなく、誰が誰で、何をしているのかがわからないまま、話が進行する。つまり、この映画を実際に見に行った人にとっては、そういうことは説明の必要がないほど自明だったということだろう。さすがは学会映画。

小説版「人間革命」を読んだことはないので、これが戸田城聖池田大作の作品からどこを取ってきているかは不明。牧口常三郎役で芦田伸介が出てくるが、これは戸田城聖を道に引き込むだけの脇役で、全編の主役は戸田城聖。しかも、戸田は明らかに日蓮に擬されている。

日蓮役は仲代達矢なのだが、この役にはセリフがない。正確に言えば日蓮のセリフ部分は、全部戸田の説教があてられていて、戸田=日蓮の図式で話がまとまっている。創価学会の立場としては、これが当然なのだろうが、うまいやり方。

前半は、戸田と牧口が創価教育学会を興し、牧口が獄死して、戸田が戦後に創価学会を再建する話。後半は、戸田の法華経講義、特に「十界論」がえんえんと続く。この手の説教映画はあんまりおもしろくないことが多いのだが、これはおもしろい。戸田の説教はいちいちミニドラマがあてられていて(これもセリフなし)、黒沢年男が銀行強盗をやってその後改心したり、雪村いづみが夫婦げんかをやったり、ミニドラマをやっているメジャー俳優を見ているだけで楽しめる。

脚本は橋本忍。この説教映画を41年後の非学会員にも、おもしろく見せているのは、やはり脚本の出来のよさ。さすがだ。スタッフは、撮影=西垣六郎、音楽=伊福部昭、特技=中野昭慶など、エライ人揃い。キャストも、豪華な顔ぶれが揃っている。

そしてなんといっても、丹波哲郎の圧倒的な演技力。丹波哲郎は「セリフを覚えてこない」と言われることがあり、実際に同じ1973年公開の「仁義なき戦い 代理戦争」では、深作欣二はセリフを覚えない丹波に業を煮やして、セリフのない役をあてたということになっている。しかし、それはおそらく、丹波哲郎がこの映画にかかりきりになっていたからだろう。何しろ、全編、丹波哲郎はしゃべりたおす役で、この映画でセリフを覚えてこないということはありえない。テレビ放送がない作品なので、丹波哲郎のこの映画での演技はそれほど目立っていないのかもしれないが、とにかく全力を出しきった名演。

いろんな意味でおもしろい映画で、お金を出してソフトを買ったかいはあった。「続・人間革命」も買うわ。