東京大学戦史研究会会報第56号

東京大学戦史研究会『東京大学戦史研究会会報』第56号、2013


これも薄い本だが、168ページと、けっこうなボリューム。戦史研究会を名乗っている軍事、歴史系サークルは、ここと早稲田ほか非常に少ないのだが、コミケに本を出しているのはここだけのようだ。

この号は、「特集 イラク戦争」となっているのだが、このイラク戦争関連の記事はそんなにおもしろくない。まあ、このネタはプロが書いたものがあるのだから、しかたがないか。しかし、文献引用に注記をふらず、参考文献リストにあげて済ませているのはよろしくない。東大なんだから、そういうところはきちんとしていただきたい。

おもしろいのは、文献に頼っていない記事。ウォーゲームのプレイレポート(エポックの「英国の戦い」、Shenandoah Studioの"Battle of the Bulge"、それから"Hearts of Iron2"と3つも載っている)を見ると、軍事趣味の人がゲームに親和性が高いことがよくわかる。他に、共産趣味者が実際にベラルーシに留学した体験記とか、ひたすら中世城郭を歩いている人とか、そういう記事がおもしろい。あとは、幕末期のイギリスによる対日戦計画の記事はおもしろかった。

執筆者が教養学部の教養課程の学生(とOB)ばかりなのはなぜなのかと思っていたら、このサークルの部員が少なく、2年生以下の学生しかいないのだ。少ない部員でこれだけのボリュームの本を出しているのだから、やはりエライ。自分が学生の時とは大違い。