階級「断絶」社会アメリカ

チャールズ・マレー(橘明美訳)『階級「断絶」社会アメリカ 新上流と新下流の出現』草思社、2013


著者は政治学者で、アメリカン・エンタープライズ研究所の人。だったらどうなのかと言えば、コミュニタリアンなのだ。だから、アメリカ社会の階級分裂の本を書いているわけだが、この本は階級分裂について、ああだこうだと批評する本ではなく、階級分裂が、どのように起こっているかを実証的に描く本。

親の年収や学歴(特に重要なのは学歴)が子供の年収や学歴を決定し、新上流と新下流は、お互いに集住する傾向があるので、住んでいるコミュニティも別。人種も関係ないわけではないが、やはり重要なのは年収、学歴、職業などで決まる社会階級だ。上流は、小さい時からまじめに勉強し、上位の大学に進学し、名声のある職業につき、収入も高い。下流はこの逆。特に、生活の事故満足度、幸福感のような指標でも両者には顕著な差があり、下流は自分が不幸な生活をしていると思っている人々が顕著に多い。さらに下流は結婚せず、働かず、教会にも行かない。

政策提言の本ではないので、そういうことは出ていない。しかし、この本の内容は十分インパクトがある。日本でもこの本に似ている傾向は若干出ているように感じるが、これからはさらに上流と下流の分化傾向は促進され、社会階層を移動する可能性は下がっていくだろう。

説教めいたところはなく、さくっと読める。