基町アパート(2013)

「基町アパート」(2013 TVドラマ)


先々週、全国放送され、先週、広島でローカル放送されたNHKのドラマ。あいかわらず内容はくだらない。基町アパートが取り上げられる珍しい機会なので見たのだが、内容にはほんとうにがっかり。

内容はドキュメンタリー部分とドラマ部分があるドキュドラマなのだが、ストーリーはまるっきり原爆反対、戦争反対のプロパガンダ。まったくの紋切り型しかなく、どこかで聞いたような話ばかり。メッセージだけで、事実の意外性も微妙な心理も何もない。

基町アパートができる前は原爆スラムだったのだから、原爆の話が取り上げられてもおかしくはないし、中国人がたくさんいるアパート(公営住宅なので、所得制限があり住人は低所得者ばかり)で、中国残留邦人もたくさんいるから、そのことを取り上げるのはまあいい。ところが、ストーリーになっているのは、「原爆の悲惨さ」「戦争の悲惨さ」「原爆や戦争に反対するにはそれらを知らなければならない」という押し付けだけ。

この手の話によくある、「はだしのゲン」のプロパガンダ利用や、「ハーフじゃなくてダブルといいましょう」というくだらない説教もてんこ盛り。田舎放送局ではこの程度のものしかできないのか。

せっかく基町アパートのことを取り上げるのだったら、原爆スラム時代の話や、基町アパートへの移転の過程、基町アパートにまだ活気のあった時代の様子など、いろいろやれることがあったはず。これを何でもかんでも反核平和に利用しようとするからおかしな話になってしまうのだ。

役者は、中村梅雀石橋蓮司日色ともゑ田中美里など、それなりに上手な人を使っている。特に主人公の祖父にあたる残留邦人役をやっている石雋(中国人である)という役者はなかなかうまい。これだけいいキャストを使っても、脚本と演出がダメなので、すべては台無し。

番組のウェブサイトを見たが、当然のことながら「感動しました」という感想ばっかりである。視聴者も安く買われとりますのう(渡瀬恒彦ふうに)。