夢千代日記 5話

夢千代日記」5話


冒頭、吉永小百合の独白で、胎内被曝で白血病だと明かされる。この重要エピソードが最終回まで明かされていないところが、早坂暁脚本の妙。

前回、市駒に自首されてしまい、林隆三はどうするのかと思ったが、まだ診療所に入院している。こんな小さい町の病院に入院設備とかあるのか?それに前回か前々回で、「ここは保険が効かんので」とか、とんでもないことをケーシー高峰が言っていたし。ケーシー高峰の身元に、林隆三は不審なものを感じている。

楠トシエは子宮がんで、もう手遅れなのだが病院に入りたくないと言って酒ばかり飲んでいる。川で倒れていたところを吉永小百合に拾われる。ケーシー高峰が往診に来るが、どうしようもない状態。

ケーシー高峰のところには、中条静夫が「医師免状を見せてほしい」と言ってくる。なんとかごまかすが、免状はない。ニセ医者なのだ。劇中では「戦後まもなくからここにいる」と言っているが、そんなに長くやってたのか。戦後すぐの時期には軍隊で衛生兵をしていた人がたくさんいたとは聞くが。

結局ケーシー高峰は翌朝早く、逃げてしまう。いっしょに付き添うのが楠トシエ中条静夫は、手配するでもなく、吉永小百合とこたつで話をするだけ。医者のいなくなった診療所では、林隆三が赤ん坊を斡旋していた書類を取り上げて、火をつけて燃やしてしまう。こちらは刑事をやめるつもり。

樹木希林は、入れ込んでいた旅役者が大信田礼子といっしょに逃げてしまい、泣きわめいている。長門勇に連れられてストリップ小屋に行くと、あがた森魚がヴァイオリンを弾いて歌っている。これは本職なので上手い。

結局置屋に残った芸者は、樹木希林秋吉久美子。それから、見習いから芸者になった中村久美。これに「小夢」という源氏名がつく。林隆三はずるずるここに居座り、小夢があがた森魚のギターで初めてのお座敷に送り出される。

芸者たちのお座敷の帰りに雪がふりしきり、吉永小百合が外を眺めているところでおしまい。


終わりのようで終わりでない、続編制作を意識しているだろう終わり方。いろいろあるが早坂暁はやはり上手いわ。吉永小百合にあて書きしているドラマだが、実際、吉永の代表作になっているのだ。これまで吉永小百合の映画は、ろくなものを見たことがなく、初期の「キューポラのある街」以外は、青春映画や「動乱」のような年がいってから撮影されたものも含めて駄作だらけと思っていたが、このドラマは名作。中年をすぎてこういう作品が来るのだから、大女優は違うわ。

このドラマは視聴者の心の隙間にうまく入り込むように書かれている。1980年代の日本でこれが大受けだったことにも納得。うっかりすると、こんな日本がほんとうにあったと錯覚しそうだ。ドラマはおそろしいわ。