夢千代日記 4話

夢千代日記」4話


とうとう渦中の人、芸者市駒が夢千代を訪ねてきた。しかし、顔は映らないのだ。連続ドラマだから、後で出ると思うが、こういう演出もアリなのか。5回あるうちの4回目なんですが…。

木原先生(ケーシー高峰)が芸者にしてやってくれ、と連れてきた、足の悪い女の子、時子(中村久美)が非常にいい感じ。足が悪いので、樹木希林が仕込んでも踊りができないのだ。これで芸者がつとまるわけがないのだが、そういう人が芸者になるのが、このファンタジードラマ。

ヤクザの親分(草薙幸二郎)は、強面ではなく、自分も被爆者で、吉永小百合と原爆の思い出話をして、死んだ吉永小百合の母親の仏壇に線香をあげている。といっても吉永小百合は一切聞く耳持たぬという態度。広島ヤクザも、こんな寂れた温泉町でシノギをやらなきゃいけないほど大変なのか。

吉永小百合の仏壇には、父母の位牌に加えて、夢千代自身の子供の位牌。この亡くなった子供というのが、加藤治子がやっている「煙草屋旅館」の息子(岡田裕介)との子供。吉永小百合は、子供のことは岡田裕介には隠し通している。

木原先生の診療所に居座っている林隆三だが、からだはボロボロの上、自宅からは奥さんが逃げてしまい、悲惨なことになっている。

終わりに近いところで、市駒の顔がやっと映った。片桐夕子だ。この人のロマンポルノ出演作はぜんぜん見ていないのだが、影のある感じの、きれいな女優。この人が喫茶店吉永小百合に殺人の告白をするのだが、奥でそれを黙って聞いているのが林隆三。結局、吉永小百合は市駒といっしょに警察に行くのでした。林隆三の立場というものがないなあ。

あいかわらず、太平洋側のことを「表日本」「表側」とずっと言っているのだが、この「表日本」というのは、「現実の日本」のことなのだと、だんだんわかってきた。「裏日本」とは言われない、このドラマに出てくる但馬の温泉町は、現実にはない、ファンタジーの中にある日本だ。

2013年時点で見ると、このドラマ全体が「昭和の香り」ということで片付けられてしまうところだが、実際の1981年はバブル前の調子のよかった時期で、このドラマに出てくる風景自体、視聴者からはチベットブータンみたいに見えただろうことは想像がつく。ドラマのロケ地だった湯村温泉は、今はきれいな温泉町。ドラマの中の湯村温泉みたいなところは、実際の山陰地方にはゴロゴロ現存しているのだが。