お家賃ですけど

能町みね子『お家賃ですけど』東京書籍、2010


著者が住んでいた(まだ住んでいる?)牛込の古いアパートでの日記エッセイ。いまどき、築40年、6畳と3畳のキッチン、風呂なし、トイレ(和風)つき、、月4万円という部屋。場所を考えれば安いのだが、築年数が古く、今風のつくりではないので、なかなか入居者が入らないそうだ。

著者はここに1年だけ住んで、その後性転換して女になり、またこのアパートに舞い戻ってきた。平成十四年春から、平成十九年春までの生活の記録。おばあさんが亡くなったり、ご本人が循環器系の病気で入院したり、何より外国で性転換の手術をしたりと、けっこう大変な生活なのだ。しかし、この部屋のおかげで、著者の心はかなり安らげるものになっているらしい。

落ち着ける住処はほんとうに気持ちをなごませる。著者の、このアパートに対する愛がひしひしと伝わってきて、読後感も落ち着く。