古本道入門

岡崎武志『古本道入門 買うたのしみ、売るよろこび』中公新書ラクレ、2011


本ライターの著者が、古本の世界への道案内をする本。古本屋との付き合い方から、戦前の本や雑誌の読み方、神保町ガイド、東京以外の古本屋、ブックオフの活用法、即売展の活用法、仕事として古本屋を始める方法まで、ひととおりのことを書き尽くしている。

薄い新書だが、内容はかなり濃い本で、ネット上ではわからない、足で蓄積されたノウハウが詰まっている。本好きの世界は底なしだから、古本について書くこと自体、かなりたいへんだが、この本でも1章ごとに「コラム・達人に学べ!」というタイトルで、本の愛好家たちが古本にどのように接しているかということが書かれている。取り上げられているのは、植草甚一紀田順一郎坂崎重盛鹿島茂池谷伊佐夫樽見博山本善行坪内祐三

著者のトークショーを以前聞きに行ったが、「図書館は利用しません」と断言していた。なぜかはよくわからないのだが、この本を読むと、本を買う、所有する、売るという行為そのものが好きなのだと思う。最近は、ブックオフでセドリしてネット通販で売る商売も成立しているが、この本でもネット古本屋についての案内がある。ただし、著者自身はとても煩雑でやっていられないという。実際、リアルの古書店以上に、ネット通販の古本屋はまめな性格でないとできないとおもわれる。

しかしこれだけ買っていれば、読むのがたいへんなことは当然として、蔵書スペースを維持することが並大抵ではないだろう。本好きには共通の問題だが、著者は電子化などは一切やらないらしいので(それはそうだろうとは思うが)、家の床が抜けそうなことになっているだろう。古本屋(地方も含め)や即売展に出かけていく労力も相当のもの。これは本当に大変そう。