マンガけもの道

岩井道『マンガけもの道』扶桑社、2010


週刊「SPA!」に連載されていた記事を単行本化したもの。この連載は、むかしSPA!を読んでいたころに一番おもしろかったページだった。著者は、「まんだらけ」中野店副店長で古書、珍本マンガ収集家という人。

新刊のメジャーなマンガではなく、すでに入手がむずかしい古本マンガ、しかもその中の珍作、怪作のみを集めて紹介するというもの。ネタのおもしろさと紹介する文章のおもしろさが両方要求されると思うが、ともに基準をはるかに超えたおもしろさ。

あからさまに石原慎太郎をパロったとおもわれるマンガ(3作ある)とか、池沢さとしつのだじろうなど大家が描いた変なマンガ、アニメ版とはまるっきり違っている岡崎版『機動戦士ガンダム』、実在選手の明らかにおかしいネタが続出する、一峰大二『まんがでわかる巨人軍101のひみつ』などなど、よほど好きな人でなければ読まないような作品が続出。山田邦子が、小学校6年生の女の子からの人生相談(先生を好きになっちゃったけど、どうしよう)に、「思い切ってうちあけてみよう」って答えていて、それはマズイでしょう。

しかしこれでも著者によれば、「古本マンガの広大な腐海の入り口にすぎない」のだそうで、まあそれはそうだろう。一般書でもおかしな本は山ほどあるので、マンガだと珍本奇書がいくらあってもおかしくはない。しかし、その中からおもしろいものを掘り出してくるとなると、気の遠くなるような話。

最近はSPA!を読んでいないのだが、本になっているということはもう連載は終わっているのだろうか。あまり他の人が手を出している分野ではないので、この企画はどこかで続けていてほしいのだが。