人間コク宝 まんが道

吉田豪『人間コク宝 まんが道コアマガジン、2012


吉田豪のマンガ家対談集。古屋兎丸小林よしのり若杉公徳花沢健吾福満しげゆきカラスヤサトシ杉作J太郎福本伸行川崎タカオ板垣恵介佐藤秀峰浅野いにお小池一夫泉晴紀、村上和彦、地下沢中也、が対談相手。

自分があまりマンガを読まないせいで、ここに出てくる人の半分は名前も知らない。名前を知っている人で、小林、福本、小池、泉、村上、杉作、古泉、佐藤くらい。まともに読んでいるのは、福本伸行小池一夫泉晴紀だけだ。しかし、このインタビュー集はめちゃめちゃおもしろい。

ほとんどの話は、マンガ家が売れなかったころの話、とくに「どうやって童貞を捨てたか」「童貞だった頃に何をしていたか」というエピソードを必ず聞いているのだが、これがおもしろい。とにかく、ほとんどのマンガ家が、ここまで「もてなかったことをこじらせている」というのがびっくり。まあさすがに小池一夫とか、村上和彦のような老大家はそんな話はしていないが、福本伸行みたいにガンガン売れまくって、ちゃんとモテそうな人でも、「昔は違ってて」云々という話をぶつぶつやっている。

モテなかったことをこじらせた結果は、当然モテる人間への嫉妬だったり、同業者への嫉妬だったり、誰が売れていて自分はそうでないとか、そんな話が頻出。だいたいマンガ家など、売れないどころか生活も成り立たないような人がたくさんいて、売れなければさっさとお払い箱になるような世界だから、ここに出ている人は例外もあるが、それなりに売れている人のはず。それでも、中身はこんなもの。

まあ、モテるモテないとか、売れてるかどうかなど、それを自分の中でどう消化して創作に結びつけていくかという話だから、つまらないことをこじらせていてもおかしいわけではないし、逆にどこかでこじらせている人が創作を仕事にすることが多いのだろうと思うので、ここで書かれていることは不思議ではないが、まあ知らない人のインタビューでここまで笑えることはめずらしい。やはりこういう話をちゃんと引き出してくる吉田豪の力量は大したもの。