チャーチルを裏切った男たち

チャーチルを裏切った男 たち 日英海軍の諜報戦」、NHK BS1、2012.12.17


日本海軍航空隊の創設期に、イギリス軍の軍人が機密保持規定に反して日本側に協力していたという話。協力者は、ウィリアム・センピル。イギリス空軍の公式教育団のメンバーだったが、日英同盟の破棄により協力関係がなくなったあとも、個人的に日本海軍に機密を提供し、かつその報酬を受けていた。

イギリス情報保安部は、日本大使館の暗号電報を解読していたため、そのことを知っていたが、外交暗号を解読してることを隠すためにセンピルを訴追することは断念された。

日本は、東南アジアをにらんでイギリスの要衝シンガポールの情報を収集してたが、イギリスはこれを知っていて見逃していた。

センピルは、右翼的な思想を持ち、贅沢な生活のため金にも困っていて、そのために多額の報酬で日本に協力していたらしい。

また、ローズベルトとチャーチルの大西洋会談の詳細な内容も日本側に筒抜けになっており、それにもセンピルが絡んでいたらしい。チャーチルはセンピルを海軍省から追放しようとしたが、保守党内部への影響を考慮して結局断念した。結局イギリスは東洋艦隊とシンガポールを失って、その失敗をわが身で償うことになったという話。

イギリスのプロダクションが、MI5の公開情報を元にして制作した番組。センピルが公的に行った日本海軍に対する協力をきちんと評価していないと感じるし、センピルが流した情報がどの程度の影響を有していたかについても、十分な評価はされていないと感じる。しかし、センピルが実質的な日本のスパイだったこと、MI5が逐一その過程を掴んでいたこと、にもかかわらず、第2次大戦が始まってもセンピルは海軍省に勤務を続け、訴追されずに寿命を全うしたという事実は、非常に面白い。

このシリーズは今日から4日間、NHK BS1で放送されるのだが、明日以降は多分見られない。録画しておかなくちゃ。