大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた

田幸和歌子『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』太田出版、2012


朝ドラ(NHKの「連続テレビ小説」)について、最近作の「梅ちゃん先生」までをカバーした解説本。著者は、「マー姉ちゃん」(1979)以後のすべての朝ドラを見ているとのことだが、それ以前の作品についても可能な限りフォローされている。

カーネーション」は特別に思い入れがあるようで、最初の1章はまるまる「カーネーション」にあてられている。あとは、朝ドラのヒロイン、恋愛、家族像、はじまり、戦略、俳優たち、現在と未来に章があてられていて、朝ドラ全体をこれ一冊でカバーしている。

あらためて認識したのだが、自分は生活習慣その他の関係で、基本的に朝ドラは見ていない。子供の頃、少しだけ見たというものを除くと、「おしん」、「おんなは度胸」(一部だけ)、「カーネーション」の3作しか見ていない。「おしん」は、CSのファミリー劇場で無限リピートされていたから見ただけで、リアルでは見ていない。ということで、朝ドラに寄せる著者の情熱のほんの一部しかわからないところが、読んでいてつらいところ。

それでも、著者は文献資料や作品を当たっているだけでなく、初期作品(「おはなはん」を含む)のプロデューサー斉藤暁や、「おしん」「はね駒」のプロデューサー小林由紀子にインタビューを取りに行っていて、ちゃんと手間をかけて書いている。基本的に、朝ドラは、プロデューサーも脚本家も、1回限りの起用がほとんどで、複数回担当することはめったになく、そのために毎回新しい組み合わせで新しい企画への挑戦が行われているということにはけっこう驚いた。4回脚本を執筆している橋田壽賀子のようなのはほんとうの例外で、よほど当たっている人でも2回しか書いていない。民放でよくある、ヒット作を同じプロデューサーと脚本家のコンビで量産するという体制ではないので、大ヒット連発ということにならない代わりに、毎回新鮮な出来になるので、それがマンネリ化を防いでいるという指摘には非常に納得した。

視聴率では、「おしん」の平均視聴率50%以上を最高点にして、最近では他のドラマと同じように低落する傾向にあり、「つばさ」「ウェルかめ」で13%台まで落ちているのだが、「視聴率と作品の人気は必ずしも比例していない」のだという。自分も、「カーネーション」よりも視聴率では「梅ちゃん先生」の方が高いという話を聞いて驚いていたので、それには納得。それでもNHKは、「ゲゲゲの女房」から放送時間帯を15分切り上げて8時からにするなど、いろいろ工夫はしているのだ。

主役のオーディションのやり方とか、おもしろいエピソード多し。同じドラマ枠を51年間続けているというのはやはり簡単なことではない。「時計代わり」と言われても、時計代わりに民放のワイドショーではなく、NHKのドラマを習慣にしている人がこれだけの数いるというのがすごいことだと思う。