赤い糸の女 39話

赤い糸の女」39話


芹亜は、貴道家に出かけて小沢真珠に、「麻衣子を殺したのは、唯美」「唯美は、徳須とデキている」とチクっている。ていうか、上田に来てからは唯美と徳須が関係を持ったことはないので、単なるデマである。とにかく唯美と栃彦一家をまとめて、今の畑から追い出してしまえというのが芹亜の陰謀。

「徳さんは、世界中で一番セックスの相性がいい相手だからって、どうしたってちょっかい出すでしょ? 」
「唯美だって、東京じゃ、売春婦までしてた女だから、誘われれば簡単に不倫の一線を乗り越えちゃうんだから。 」
「だからベーシックには貞操観念が無いんですよ彼女は。 」
「ホールで子供たちを遊ばせたまま、いつの間にか徳さんと空いてる部屋にしけこんで… 」
「一階では老人たちが一生懸命リハビリに励んでるというのに、その上では、麟平とあの女が~?! 」
「昼日中からセックスしてるんだから。 」
「そういう福祉施設での破廉恥行為を許しておくべきではないと思います。 」
「明らかに、唯美が仕組んだ殺人なんだから。 」
「あなたと結婚しとけばいいものを、生意気にも養子の口を蹴っ飛ばしたんですってね~? 」
「今度という今度はあたしも許しません!…ええ、やりますとも!これは正義のためですから。 」
というわけで、真珠様は目がつりあがっている。

真珠様は、市の事業の一環で農地を貸していたのだが、市に土地を返せと申し出たらしく、市の担当者が「替地をあげるから、土地は更地にして返してくれ」と伝えに来る。頭に血が上る栃彦。唯美も驚く。まだ背後に芹亜がいるとは気がついていないらしい。栃彦は、夜中に真珠様のところに直談判に出向く。

「こんな理不尽がまかり通るのかーって言うんでしょ?あたしが決断したんだからまかり通るんです! 」
「当たり前ですよー…ただ、あなたたちから取り上げたかっただけ。 」
「慈悲深い菩薩のような人間にもなれるし、血も涙も無い冷酷な夜叉のような人間にもなれる女なのよ! 」
「人がいいのか、ボンクラなのか…だから唯美みたいな売春婦あがりの女と結婚したのね~? 」
「唯美がどういう不業績を重ねてきたか。麻衣子を事故に見せかけて生き埋めにして殺し、シルバーサービスセンターのベッドルームで爛れた不倫行為にうつつを抜かし… 」
「社会正義のために、この土地を美しく浄化したいと思ってるの。 」
「唯美みたいな災いを呼び込むような女はいなくなって欲しいの。 」
「何が社会正義だ!!単なるあなたの妄想じゃないか!…狂ってる!あんたこそ魔女だ!! 」
「出て行きなさい!お前たちなんか目障りよー!とっとと出て行けー!!失せろー!! 」
真珠様は、杖を取り出して栃彦を追っ払う。よくやった真珠様。

栃彦は、その晩も翌朝も家に帰ってこない。唯美のところに、温泉街で飲んで倒れているところを拾ったよという芹亜からの電話が。ところが唯美がデイケアセンターに行くと、栃彦は入れ違いでいなくなっていた。
「え~?来るの~?20m以上近づくなって言ってる人がここに来るの~? 」
「物質文明に毒されない自然な暮らし。電気もガスもない素朴なままごと生活。ンハハハ…それが壊れかけてる~!ウフフフ…アハハハ!アーハハハ… 」
と大笑いの芹亜。

栃彦は、自分の果樹園をなぎ払って、自分でめちゃくちゃに・・・。家に帰っても獨酒をあおって酔っ払っている。

「私たちはまだ、野菜畑が残されてるわ。何とか食いつなぐことぐらいは… 」
「あなたの染色の技術は、琴子先生も当てにしてるんだし、あたしたち頑張ればなんとかなるわよ。 」
「仕方が無いじゃない!方向転換するよりは」「方向転換?簡単に言うな!!」 
「でも、でも必ず、織物と染色があたしたちを助けてくれるわ。 」
「あたしたちの赤い糸が助けてくれるわ!あたしが真綿から一本ずつ紡いで、撚って、あなたが赤く染める。その一本の赤い糸で、あたしたちはしっかり結びついているのよ! 」
「その糸さえ切れなければ、あたしたちは…(バシャ) 」
「売春婦が!…売春をするような女が、聞いたようなことを抜かしやがって。 」
「何が赤い糸だ。お前のような女と一緒になったために、こんな目に遭わされるんだ!! 」
獨酒をいきなり、唯美にぶっかけ、瓶に入った分も頭の上からドボドボぶっかけた。酒粕だらけの唯美はただ呆然。

栃彦はそのままデイケアセンターの芹亜のところに出かけ、何やらあやしい雰囲気に。

次回予告。栃彦の上に馬乗りになって腰をふる芹亜。果樹の木をチェーンソーで切り倒す栃彦。芹亜は、またまた唯美によくわからないことを言っている。あああ。