赤い糸の女 34話

赤い糸の女」34話


ホテルの部屋に帰ってきた芹亜の怒りが爆発したところから。
「あいつらはね~、あたしを馬鹿にしてるんだ! 」
「な~にがナチュラリストよ! 」
「それで、何?自然のままの生き方?それで、幸せだって自由だって?! 」
「あたしはなんなの?美容整形で顔を手術しまくって、肋骨を外してまでして体を作り変えたサイボーグだとでも言うの? 」
「金金金で、きわどいことまでやって、今度の事業資金を貯めたあたしは?物質本位の化け物なの?! 」
「どうせこんな世の中、人工的に生きて何が悪いんだ。 」
「あたしの全てを否定してるのよ。あたしの人格も、生き方も、そんなもんは塵芥だって言われてるようなもんじゃない! 」
「あの子の顔を見た途端さーっと血の気が引いたわ。」 
「あたしの子は、醜い豚娘。唯美の子供は、美しい天使でお姫様。 」
「あたしの少女時代と同じことがまた繰り返されるかと思うと、あ~頭がクラクラしてくるわ!」 
「あなたは私なしでは生きていけない。必ず従属させて見せるから。 」
ということで、要は唯美に対する積もり積もった恨みと嫉妬である。まあ、芹亜にはもともとそれしかないわけだが。

芹亜がさしあたり目標にしたのは、いしのようこいしのようこに近づいて、手なずけようとしている。化粧品をいしのようこにあげて、アンチエイジングだ、若返れ、と言っている。
「女はね、いくつになっても、お化粧が大事なの…お化粧で人生変わるんだから。 」
「女はアンチエイジングだから」「ええ、アンチー…」「アンチ、エイジングよ」 

芹亜の事業の最初の策は、村の老人を集めて町のスーパーに送っていくというもの。唯美は、「買い物は必要ないから」と言っている。唯美がいしのようこの家を訪ねていくと、芹亜からもらった化粧品で、バッチリメイクしているのでおどろく。いしのようこは60歳以上という設定なのだが、実物はもっと若いので、化粧すれば余裕で40代で通る。
「年齢に負けずに毎日綺麗にお化粧をしてれば、人生が変わるって言われたの。 」
「老人が何をすれば喜ぶかってことをちゃ~んとわかってんのよ~。 」
「あたしこれからは、毎日綺麗にお化粧をして、身奇麗にして、人生を前向きに歩いていくことに決めたの。 」
「女としてあたしだってもう一度、花を咲かせるかもしれないでしょ~ん! 」

芹亜が次に近づくのは栃彦。栃彦が作っている野菜を、デイケアセンターで引き取る、契約農家になってくれという話。話は悪くないので、栃彦もけっこう乗ってくる。まあ、見るからに目的は怪しいが。唯美は、この話を聞いて明らかに警戒している。
「あんな人の言うことを真に受けちゃ、ろくなことがないのよ! 」
「違うのよ!なんだかんだって理由をつけて、あなたに近づきたいだけなのよ。 」
「芹亜はそんな単純な女じゃないの。何を考えてるかわかったもんじゃないわ。 」
「母にも変なちょっかいを出して…親切ごかしに化粧品をたくさんプレゼントして、」 
「変に若作りの派手な化粧して、見てるとあたし、なんだか情けなくって。 」
「焼餅焼いてるみたいじゃないか?…そんな低次元の感情じゃないのか? 」
「大変な女なの。他の人にはわからないの。私にしか彼女の恐ろしさはわからない。 」
「彼女が吐き出す蜘蛛の糸のような赤い糸で、あたしはがんじがらめになりそうな気がして。 」
「なんだか悪いことが起きそうな気がする。とっても悪いことが・・・。」

徳須と芹亜は、出資者の小沢真珠にあいさつに行く。真珠様は、上機嫌で、二人を麻衣子の部屋(以前唯美が寄宿していた部屋)に連れていく。あいかわらず唯美に敵意を燃やす真珠様。
「婚約者だから別にいいけど、唯美ともこの人ともなんてねー! 」
「唯美のことは許せない、あの人殺しが!」

徳須は、真珠様に近づいて、露骨に口説いてきた。
「それより遥香さん、寂しくないですか?…」「別に~!余計なお世話だわ!」 
「僕でよければ、いつでも慰めてあげますよ」「あら、そっ!」 
遥香さんさえ受け入れてくれれば、僕の体で存分に喜ばせてあげますよ。 」
「ふん!ずいぶん自信たっぷりね~。だいたいあなたはそういう横柄な口を…んー!ん、んー!! 」
というわけで、いきなりベロチュー。真珠様も、まんざらでもないらしく、徳須にしがみついている。

一方、芹亜は、唯美のところに行って、真珠様の悪口を言い、また新しい悪巧み。
「あんたってほんとにあの遥香って女から憎まれてるわね。 」
「唯美?いっそ、この貴道家をあたしたちでのっとらない? 」
「徳さんとあんたとあたしで計画を立ててねえ!この家をあたしたちのものにしましょうよ。 」
というわけで、芹亜の邪悪計画は着々と進行中。唯美がまた不幸になると思うと、見ている方もたのしみに・・・。