文学賞の光と影

小谷野敦文学賞の光と影』、青土社、2012


あっちゃんの「文学賞」本。芥川賞直木賞にはじまり、ノーベル文学賞、新潮社関連の文学賞、作家と学歴、女性作家についての章がたてられていて、とにかくどの文学賞をどの人がとって、その人は受賞後どうなったのか、いつまでたってもほとんど賞をとれないながら、それなりに作家として身を立てられた人は誰か、というようなことが、これでもかとばかり書かれている。

あっちゃんは、文学賞と作家についてデータベースをつくって管理しているんだろうなあ。ふつうに、どの作家が何回賞をとっていて、なんてことを覚えているのは不可能だと思う。系図とか、基礎データになる作業がやたらと好きなあっちゃんなので、不思議なことではないが。

個人的に文学賞にはほとんど関心をもっていないので、へぇぇという感想しか持てないのだが、あっちゃんがむかし、『もてない男』だったか何だったかに、梅原猛がなんでそんなに勲章を欲しがるのかと聞かれて「自分の年になると、勲章をもらうくらいしか楽しみがない」と答えていて、それに親しみをもったと書いていたことを思い出した。

あとがきに、あっちゃんご本人が「自分がいかに賞をほしいのか」についてちゃんと書いているのでよけいなことを言う必要もないのだが、あっちゃん自身はサントリー学芸賞を取っている。しかし「一つ賞をもらっている人間が二つ目を欲しがっても、何もおかしいことはないだろう」とのこと。まあそれはそうだ。あっちゃんくらい本を出しているにしては不遇だといえないこともない。

巻末に、あっちゃん自選による、「主要文学賞受賞作の中で良作といえる作品」「候補作になっただけで受賞できなかったが、良作といえる作品」の一覧があげてある。自分はそんなに文学を読んでいるとはいえないが、この選択は自分のわかる範囲で言えば、非常に的確なものであると思う。というか、文学賞を実際に取った作品の中で、「いいもの」がこれだけしかないのかということに驚く。まあ、選者本人が「基準は厳しくした」といっているのだが。

やっぱり文学賞は、それをあてにして読むものではないと思う。本屋大賞も(この本では取り上げていないが)、自分としておもしろいと思えた作品は半分もない。