舟を編む

三浦しをん舟を編む』、光文社、2011

三浦しをん本屋大賞受賞作、で、今年のベストセラー本。こういうものは基本的に時間が立って図書館で借りられるようになるか、さもなくばブックオフの100円コーナーに落ちてくるまで読まないのだが、たまたま病院の図書コーナーにあったので読んでしまった。ちなみにこの本は現在、市立図書館で1070人予約が入っていた…。

「辞書の編纂」という普通の人が(自分の含め)ぜんぜん知らないプロセスがテーマなので、そこが楽しめる。特にそこでの編集者の役割というのは自分もてんで知らなかったので、非常に勉強になった。大部の辞書に膨大な労力がかかることは誰でも見当がつくが、執筆者だけでなく、編集者もその作業にかかりきりになるわけなので、よほどの出版社でなくてはできない事業だ。ちなみにこの本の中では「大渡海」という辞書をつくるために、15年かかったことになっている。もちろんスタッフも一部は入れ替わっているのだが、本当の大事業だ。

言葉の選択から、執筆者の原稿の細かいチェック、語義のどれを入れてどれを省くか、装丁から特別な紙づくりまで、編集者の作業がこんなにあるのかということにおどろいた。主人公は、ほぼ最初の段階からずっと関わっていることになっているのだが、よほど粘り強い性格でないとできない特殊な仕事。とにかくここがわかったのがよかった。

ストーリー上のおまけとして、主人公の恋愛と結婚とか、ほかの編集者の性格なんかも入っているのだが、はっきりいって、この本、小説ではなくてノンフィクションにしてもらったほうがいいわ。『あやつられ文楽鑑賞』と、『仏果を得ず』でも、前のほうがおもしろいしなあ。まあ『仏果を得ず』は三浦しをんの小説では好きな方だが…。ちなみにこの『舟を編む』にはBL要素は一切ない。

これもノンフィクションにしてくれないかなあ。小説を書いちゃったからむりか。おしいなあ。